I have a bad feeling about this『42〜世界を変えた男〜』

どうにも最初から予感はしていた。
予告編から醸し出されている「良い映画」臭。そして何しろハリソン・フォードのやる気を感じるエピソード。

という事で
『42〜世界を変えた男』

いやジャッキー・ロビンソンは偉大だ。それはそれとして。
全般的にテンポも良くないし、今ひとつガツンとくるところがない。
何しろ野球のシーンに魅力がないのが厳しい。極端に言えば、作り手に野球に対する愛がないような気すらした。
感動的な場面には「感動的な音楽」、しんみりとした場面には「しんみりとした音楽」、ラストの盛り上がりには「ラストの盛り上がりにふさわしい音楽」が流れる。それらはソツがないといえばそうだけど、どちらかというと凡庸な印象しか与えなかった。
ウェインズ・ワールドのオスカー受賞シーンパロディにしか見えないというか。

相手チームの聞くに堪えないヤジ(というか完全なヘイトスピーチですな)*1にジッと堪えるところとか、無邪気に野球を観に来た子供が気がつけば罵声を浴びせてしまうとか、悪いところもないではなかったが、全体的にはピントもぼやけたぼんやりとした作品になってしまったように思う。
とにかく材料をあつめてパッと作ったインスタント感、とでも言う感じ。
ベビー・シッター遅刻のくだりとか老監督の登場とか、これはフラグ的に何か起こるのかな、と思えば特にそんなこともないし。
特に老監督は「ワシは何もせんよ」というスタンスでありながら、ここぞというところでビシッと決めてくれるのかと思ったのに特にそんな場面はなかったし。ホテル宿泊で揉めたところくらいか?活躍していたのは。
チームメイトとの壁が氷解していくところも、それぞれのキャラクターに感情移入できていないから今ひとつカタルシスがない。*2


何しろ、ハリソン・フォードがオーディションを受けてまでこの役を演じているのも良くない気がする。
もちろん悪くはない。よく演じていたと思う。
でも。
映画はあくまで仕事であって、与えられた(オファーのあった)仕事を淡々としかし誠実にこなしていく、という彼が「やる気」を出してしまったことで世界のバランスが崩れてしまったんじゃないかと思うわけです。
やはり「巻き込まれてしまって、何だか判らないけどここにいる」という風情で、困惑した表情で画面の中にたっていてもらわなければ困る。

*1:この役やっていアラン・テュディック。素晴らしい存在感。

*2:ずっとやる気のなさそうな実況していたアナが最後に笑顔になるところは良かった。