シャマランかシャラマンかいまだに迷う。 『デビル』

最新作の『エアベンダー』は未見だし、『レディ・イン・ザ・ウォーター』も見逃している。そんな自分ではあるが、シャマランは好きな映画作家だ。

という事で
『デビル』

とはいっても今回のシャマランは監督ではなくて原案と製作。今回は彼が立ち上げたプロジェクト「ザ・ナイト・クロニクルズ」の第1回作品となっている。シャマラン版トワイライトゾーンといったところだろうか。なかなか良い企画。
監督は『REC』のジョン・エリック・ドゥードル。『REC』は未見なので今作で初めて触れる。
派手さはないけど「なんか良く分からないけど不穏で気持ち悪い感じ」の空気は出ていた。
細かい事を言えば、気になる点がない訳ではない。
40階はあろうかという高層近代オフィスビルなのに、事故に対応するのが警備員二人と整備士ひとりってのはどうか?とかロビーにオフィスの人全員集まれるのかね、とか…。
しかしそれを差し引いても満足は得られた。

冒頭、逆さまで映される街並み。そこからもう居心地の悪さを感じさせる。何か不穏な世界として認識させるとでも言おうか。撮影監督のタク・フジモトという名前を見て、この作品に対する信頼度が上がったというのは言い過ぎではあるまい。


キャストがよく知らない人達というのも良い効果だった気もする。引き込まれやすい要素として機能していたんじゃないだろうか。
個人的に気に入った顔はサラリーマン役のジェフリー・エアンド。
ちょっとミック・ジョーンズにも似た特徴のある顔で、出てきた時から「なんかイヤな人」感が良く出ていた。
というか、出てくる人(エレベーターに閉じ込められる人)が全員「なんかイヤ」感を醸しだしていて、老女も若い女も、皆がイヤーな空気をまとって登場してくる。
特に警備員については、「ははあ、この警備員が外界をつなぐキーパーソンとして活躍するんだな」と早とちりしていたので、「何でこの人、すごくイヤな感じなんだろう」とちょっとイラついたりしたくらいだ。
その「なんかイヤ」感が、つまりはエレベーター内でのお互いの疑心暗鬼のバトルロワイヤル状態を生む訳で、その辺も無駄がないと言えば無駄がない。


言いかえれば、全てがストーリーに都合良く出来ていると言う事であるが、しかしそれを「ご都合主義」と呼ぶことは、少なくともこの作品について言えば批判にはあたらない。
細かい話はネタばれになってしまうので避けるが、この作品では都合良く展開しないと成り立たない
と、思うんだけどね。


ともかく80分というタイトな時間にまとめられた飽きずに楽しめる作品です。
ラストに描かれるテーマは『シックスセンス』から見られるシャマラン風味というところだろうか。
まあ道徳の教科書的という見方もできるかもしれない。

以下ネタばれ感想メモ。

  • 出来る事ならシャマランに出て欲しかったね。信心深い警備員かキャラウェイの弁護士役とかで。
  • 警備員のおじさんと整備士が死んじゃったのは、単なるノイズだろうか。それともやっぱり罪を犯しているからか?仕事中にホッケー(だったっけ?)の試合見てたからだとしたら可哀想すぎる。
  • トニーの婚約者の子、魅力的だった。ちょっとジェナ・マローンを鋭くした感じで。名前が分からない。
  • 悪魔が老女に乗り移ったのはいつなのか?最初、スリしてるときは違うんだよね、きっと。
  • ラスト。もしかして『セブン』的展開になるんじゃないかと(悪い意味で)ドキドキした。結果として「赦し」の展開で良かったと思う。