ブルー・ジョン・キャニオンなう。  『127時間』

『スーパー8』への期待がハンパない状態で、これはもう公開したらすぐにでも観にいくつもりなんだけど、その前に『127時間』を観ておかないとならない。
いや「ならない」って事はないんだけど、なんとなく今観ないとそのままになりそうでね。
ちなみに自分のダニー・ボイル経験値は非常に低く、『スラムドッグ$ミリオネア』しか観ていない。
トレインスポッティング』は見逃したまま。イギー・ポップ師匠の名盤『ラスト・フォー・ライフ』はもちろん愛聴していたし、「ボーン・スリッピー」も買った記憶があるけど映画は見逃してしまった。
まあ、そういう事ってある。避けていた訳ではない。巡り合わせ。

で、『127時間』です。
これは岩に挟まった男が如何にして危機的状況を脱するかの話、ではない。
そのジャンルで言えば『リミット』の方が楽しめる。
そうではなくて、自分の存在と他人との関係、大げさに言うなら世界との関わり方/スタンス、それを噛みしめる映画だと思った。
「岩に挟まって身動きできなくなった男が、なんとか脱出を試みる。そして…」って言う話。それは確かにスゴイ体験なんだけど、それだけなら「世界仰天ニュース」でも味わえる。
そこから更に、こちらの琴線に触れる作品になっているのはやはりダニー・ボイルの手腕、なのかな。
危機的状況に陥った時に、「そうでない自分」を想像/妄想する描写はなかなか上手いと思う。
最初は「喉渇いたなぁ、ビール飲みてえ」的なストレートな欲望なんだけど、それがだんだんと変わってくるんだよね。
「抜けだした場合の自分」「危機を乗り越えた自分」を思い浮かべる(これもすごく共感できる作りになっていると思う)というレベルから、「自分の生き方/スタンス」を見つめるというレベルへと変わるというか。
NBAを見ている大観衆の中でひとりになったアーロンの場面は、結構グッときた。


で、音。音の使い方が上手い。
上手いというか、非常に効果的で終盤の●●の音はとても…「痛い」
音楽も印象的だったけど、今回は「音」が良いね。


ジェームズ・フランコは良い役を貰ったなあ。スパイダーマンシリーズのダークなイケメンももちろんカッコいいんだけど、こんなに良い笑顔を持っていたとは意外だったわ。
時々ビリー・クリスタルにも見えたりして。(そういう意味ではオスカーの司会は間違ってなかったと思う。台本がイマイチだっただけで)


終盤、「あれ?もしかしてこれで終わっちゃうのかな?」と思ってからの展開は、畳みかけるようなリズムで感情を揺さぶる出来だ。
何て事の無い想像の範囲内の展開、単純な台詞がとても大きな意味を持って見えてくる。


映画館を出て渋谷の街を歩くと、当然人がたくさんいる。その中をトボトボ歩きながら色々と考えちゃう映画でした。
とりあえず「行き先のメモ」これ大事ね。