北野映画を思わせる静かなバイオレンス&セックス。『ラストターゲット』

有楽町の駅前と言えば「そごう」という世代。今はビックカメラになっていてその8階に角川シネマってのが出来ているのを今日知った。
なかなか綺麗で良い劇場なんだが…トイレがね、古いまま。これは残念でした。いや、古い劇場はそれはそれで味があって良いんだけど、なまじ劇場が新しくて綺麗なだけにバランスがね。


という事で
『ラストターゲット』

いきなり結論。いや良かったね。正直それ程、期待せずに観に行ったんだけど、好きだわ、コレ。
全体的に凄く静かな映画だ。台詞も音楽も少ない。
バイオレンス、というかアクションというか、とにかく銃を使った場面というのは割とあるんだけど、淡々とした描き方。
だからと言って起伏がなくて退屈かと言えばそんな事もなくて、十分惹き込まれる。
スリードさせる伏線っぽい餌をあちこちにさりげなく仕掛けてあるのもニクい。

ジョージ・クルーニー(の役柄)と言えばクールでちょっと皮肉屋、その一方で独特の正義感は持ち合わせている、そんなイメージだ。
今作でも寡黙で非情な殺し屋って感じだろうな、と思っていたらちょっと違った。
寡黙ではあるがストイックではない。しかし職人気質はある。
ストイックの程度については、「コイツ、女好きだな」と匂わせるキャラから判断出来るし、自分が何より気に入っているのは職人らしさの匂いプンプンの銃をカスタムする場面だ。
ちょっと遊戯シリーズを思い起こしたのは自分だけかもしれないが、この描写凄く好き。

修理工場で銃の材料を集めるシーンで、それまで極力抑えられていたBGMが流れ始めたところからも、創り手のこだわりを感じたのは気のせいだろうか。


原題はthe American、この意味についてはボンヤリと感じるところはあるが今は整理できない。
邦題の『ラストターゲット』は観てる途中は、「酷いタイトルだなあ、ある種ネタバレじゃん」と思ったがそういう所も含めて捻れた形で良いタイトルかもしれない、と思ってみたり。

あっと驚くサスペンス的展開はないし、派手な銃撃戦があるわけでもない。
しかし静かな空気を基調とした中で、緊張感とそして切なさを感じさせる作品。
ちょっとドライな感じは北野作品にも通ずるところがあるような気がする。
公開規模が小さいのはもったいないと思う。
これは個人的に今年のベスト10には入りそうだ。気に入りました。

以下ネタバレメモ。

  • 最後はてっきりジャックが銃に細工した事でクララが死んじゃうのかと思った。
  • 女刺客が暴発して落ちる時のあっさり加減、そしてバランスの取れた血糊。素晴らしい。
  • 神父さん、黒幕だと思うよね。上手いミスリード
  • クララがカフェで「いつもの場所って?」て言う場面、良かったねえ。
  • 終盤の銃引き渡しの場面で人がいなくなる描写、西部劇っぽい。セルジオ・レオーネの『ウエスタン』が挿入されてるあたり原題のヒントがありそうな、なさそうな…。