ギーガーの偉大さを改めて知る。『カウボーイ&エイリアン』

基本的に鑑賞記録という意味合いも込めて、映画の感想は観たその日少なくとも翌日には書こうとしている。
面白くても面白くなくても何かしら感じる事があるもので、その感じた事を生々しい状態で記録しておきたい。あとになって考え変わる事はあるとは思うけど。

と言う事で
カウボーイ&エイリアン

主演ダニエル・クレイグ、監督ジョン・ファヴロー、製作スピルバーグ。そして西部劇を舞台にエイリアンが登場するストーリー。
これで期待するなというのが無理な話で、予告編からかなりワクワクしていた作品。
だったんだけど…。
正直、これといった感想が浮かんでこない。
いや、つまらなかったわけではない。かといって面白かったという感じもしない。何と言うか心が動く事が少ない、萌える部分の少ない映画だった。


男が記憶を失くして目覚める。腕には西部劇には似つかわないSFチックな器具が装着されている。
男の過去を知っているかのような謎の女。西部劇空間に突然現れるエイリアンの襲撃シーン。
面白いハズなんだけどね、何故かグっとこなかった。
思うに敵役のエイリアンに魅力が足りないのが原因ではないだろうか。
そもそも強いんだか弱いんだか、知性があるんだか野蛮なんだかハッキリしない。地球にやって来た理由もゴールドを求めてって事なんだけど、それが食糧として必要なのか資源として必要なのかも良く分からない。人間を拉致している目的も今ひとつピンとこない。何がしたいんだ?科学文明がかなり進んでいるはずなのに裸だしさ。それともあれ鎧なのかね。
別に論理的整合性を求めているわけではない。バカバカしくたって全然構わない。ただバカバカしいならバカバカしいなりにバカバカしい説得力が欲しい。言ってること自分でも良く分からないけど。


主人公の経歴が割とあっさり明かされるのも拍子抜けだった。もっと勿体ぶっても良かったんじゃないだろうか。何だか判らないけど突然現れた名無しの男。それでしばらく引っ張って欲しかった。
腕にはめられたメカについても、その経緯についても割りと想像の範囲内というか「え?そう言う事なんですか?」って感じで驚きも少ない。

それなりに良いシーンがない事も無い。
西部劇空間に現れるエイリアン戦闘機の異化効果はそれなりにあった。
キース・キャラダインと孫が最後に交わす会話はベタなりに悪くなかったし、サム・ロックウェル演じる酒場の店主ドクの前フリ回収的な活躍、ハリソン・フォードと忠実な部下とのやり取りなど全体的に堅実な演出ではあった。
だが何かが足りない。ワクワクがない。主人公とエイリアンの因縁の回収なんか堅実に処理はしているんだけど、もう少しこう何て言うかね、荒っぽいなりにもアツくさせる要素が欲しかったという感じでしょうか。

エイリアンのビジュアルもヌルヌルした感じで、スライム状の粘液に混じった触覚とか内臓がジュルジュル出てくるタイプ。結局『エイリアン』のギーガー的造形から抜け切れていない。これは別にこの作品に限ったことではないけど。
そろそろ新しいタイプのエイリアン造形が見たい。

あ、エラ役のオリヴィア・ワイルドは無機質な感じが出ていて役に合っていたと思う。

と言う事で、まさに可も無く不可も無くという作品でした。