清々しいほどの予定調和。『リアルスティール』

2001年も2010年もとっくに過ぎてしまって、まだモノリスは現れていないが、それでも今はしっかりと未来だと思う。
携帯電話とかインターネットとか充分未来だよね。機能の更新と言う形で未来はジワジワとやってきている。

と言う事で
リアルスティール


結論から言って予定調和の塊のような映画だった。主人公のどん底からの逆転、次第に強くなる親子の絆、その危機、そしてラスボスとの死闘…。最初から最後までこちらの予想(予測)を裏切る事はない。
しかし、その定番化したストーリー展開は清々しいほとで、むしろ安心して観れるという点で良く出来ている。
というかですね、ダコタ・ゴヨ君が可愛過ぎる。
最強ロボットボクサー「ゼウス」を初めて見た時の驚きと羨望の眼差しとかATOMと一緒に踊る仕草。
それから日本語の「ミギ、ヒダリ。アッパーカットニカイ」などなど。一つ一つの所作に愛嬌がある。
ちょっと幼少アナキンのジェイク・ロイド君に似てるよね。

以下ネタバレ含みながら。いやネタバレってほどの予想外の展開はないけどね。


もちろんツッコミどころはある。
マックスは崖の下からどうやってATOMを引き上げたのか?とかね。全体に漂っている「ご都合主義展開」がまったく気にならないわけではない。
それでもルーザー達がのし上がっていく様というのはやはり胸熱くなる。チャーリーが人生の敗者であるとともにATOMもまた時代に取り残されたルーザーなんだよね。スパークリング専用ロボットという立場で「勝負に勝つ」という充足感を今まで感じることのなかったATOMの逆転物語でもある、というね。
予告編で思いっきり見せていたチャーリーとATOMのシンクロしたパンチの場面は充分なカタルシスを感じる。
となるとやはり控室の鏡で自分を見つめていたATOMにはやはり「自我」があると言う事だろうか。


いやはや、それにしてもチャーリーとATOMのシンクロトレーニングからの「ほとんどロッキー状態」の展開には、よくぞここまで思い切ったなという感じ。
判定でゼウスが勝って、それでも真の王者はATOM(=チャーリー&マックス)みたいな展開か?と思っていたら、まさにそのままだった。最後に「エイドリアーーーン!」って叫ぶんじゃないかと思ったくらいだ。
しかしここまでやられると清々しい。正直泣いたし。
ただそれだけにATOMの音声機能が壊れてしまって、シンクロモード(シャドー機能だっけ?)で闘う決断をするのは、マックスでなくてチャーリー自身にやって欲しかった。
「もうダメだ。これ以上は戦えない」って言う息子マックスに対して、「バカをいうな。まだこいつ(つまりは「俺」)はやれる!」って感じでチャーリーが戦う姿勢を見せてくれた方が、もっとグっときたんだけどね。


ご都合主義や定番ストーリーが気になって仕方がない作品もあれば、今作のようにそれがそれほどマイナスにならない作品もある。
そのあたりは、キャストの魅力や安定感のある演出力ということなのかな。
ヒュー・ジャックマンもダコタ・ゴヨも良かったし、マーヴィン役の人(良く映画でみるけど名前わからない)までキャストは皆良かったと思う。カウボーイ野郎の入れ歯っぽい喋り方も嫌味な人って感じが良く出ていた。
あとベイリー役のエヴァンジェリン・リリー。ちょっとリヴ・タイラーっぽくて良いですね。割りと好みの顔でした。


ところで2020年のメイド・イン・ジャパンには果たしてどれだけの魅力があるのか。
騒音少年のように頭ブッ飛ばされてしまうのか。
そんな事を思うと少し寂しくなる。