死して屍拾う者なし。『ミッション:インポッシブル/ゴーストプロトコル』

アウトサイダー』のトム・クルーズは華奢な優男って感じでそれほど印象に残らなった。まあ、小さい役でその他って扱いだったのもあるけど。何しろ、男はやっぱりマット・ディロンだろ!って時代ですからね。
あの頃はまさかこんなにビッグなスターになるとは思ってなかったなあ。


という事で
ミッション:インポッシブル/ゴーストプロトコル

デ・パルマ版の一作目はとても楽しんで観たが、二作目のジョン・ウー版はいまいち乗り切れず、結局三作目は未見。
今回についてもスルーするつもりだったがサイモン・ペグとジェレミー・レナーの名前を見つけて観ることにしてみた。


いやはや楽しかったです!
こういうシリーズ物の魅力(楽しみ)のひとつに主人公の初登場シーンと定番のテーマが流れるオープニングがある。
この作品でもアバンタイトルからタイトルまでの展開は気持ち良い。満を時してのトム登場とお馴染みの導火線オープニング。やはりあのテーマ曲を聴くと気持ちがアガる。


思うにジョン・ウー版に乗り切れなかったのはトム・クルーズの「オレ様」ぶりがいまいち上手く機能していなかったからじゃないだろうか。ちょっと失笑してしまいそうになる無双ぶりにちょっと白けてしまった記憶。あまり覚えてないけど。


今作でも確かにトム演じるイーサンは無敵に近い。主人公補正というレベルを超えて不死身だ。ブルジュ・ハリファでの壁上りなんて「んなアホな」状態だし。クライマックスでの行動なんてあれ死んじゃうでしょ、って感じだ。
しかし(前作は未見なので分からないが)今回はそんな不死身のイーサンひとりの活躍というよりチームとしてのミッション感が良く出ていたと思う。
紅一点のジェーン、謎めいた男のブラント、コメディリリーフ的なベンジー。良いバランスでのチーム感で楽しい。ジェーンと安っぽい恋愛関係にならないあたりも良かった。

以下ネタバレで。


ミッション通達後の「なお、このテープ(データ)は自動的に消滅する」が上手くいかないとかベンジーの「あー疲れた」などのクスグリも楽しい。特にクレムリン脱出後のイーサンが着ていたスプリングスティーンTシャツには声出して笑った。ボーンインザUSA!

確かにイーサンは超人的だが決して孤高のヒーローを気取っていない。
例えばロシアの病院から抜け出した時、颯爽と窓から消えたかと思えば壁際でにっちもさっちもいってなかったり、ブルジュ・ハリファで外壁を昇ることになった時、イーサンは「え。オレ?エレベーターシャフトとか駄目なの?」って感じでやや狼狽えたり。
何れも結果的には切り抜け、やり遂げる訳だけど、そういう主人公の超人的才能を相対化するような描写が見受けられる。

妻の不在を巡る悲劇は、ジェーンのパートナーの殉職というエピソードとして代替的に提示され、ブラントの告白で補強される。しかし、そのテーマは映画に必要以上に影を落としていない。
それだけにラストのイーサンの眼差しが胸に迫る。(ノンクレジットながらミシェル・モナハンの無言の演技が素晴らしい!)
イーサンと仲間たちのバランス。物語のバランス。そして身長のバランス。それらが上手く成立していたと思う。

キャストはトムはもちろんジェーン役のポーラ・パットンもブラント役のジェレミー・レナーベンジー役のサイモン・ペグも、それぞれが程よい存在感を発揮してよい。
ジャレミー・レナーは良い顔してるねー。愛嬌のある目と八の字眉毛。やり手エージェントっぽい所作が心地よい。

サイモン・ペグは安心のコメディリリーフぶりだったのは当たり前としても、女殺し屋のモローさん。
かっこよかったですね。ちょっとケイト・モスっぽい感じで。あっさり退場してしまったのがちょっと残念。

ハードな方向にシフトした007シリーズ(それはそれで凄く好きなんだけど)がかつて持っていたような派手で楽しいという要素が一杯で正月映画にピッタリじゃないだろうか。

と言う事で

ミッション、コンプリートッ…!