いや、私らも仕事で来てますんで…。 『バトルシップ』

良く耳にする話でアメリカでは観客がアクション映画を観ながらワーワー騒いでるっていうのがある。
主人公が敵を倒したら拍手しながら「いやっほおおおう!」とか叫びながら楽しんでる、というような。
「U・S・A!U・S・A!」ってヤツね。

という事で

バトルシップ

冒頭からタイトルが出るまでのテンポ悪い感じに、やや不安を覚えたものの、謎の物体の襲来そして海上バトルが始まればラストまで飽きることなく見せてくれる。
まあツッコミ所がある事は最初から百も承知なのでそれほど欠点にはなっていないと思う。
予定調和的というか、レパートリー的というか、分かりやすいフラグが分かりやすく回収される構成についても気にならない。というかむしろ心地良いくらいだ。
テイラー・キッチュ演じるアレックス・ホッパーの(ゆるくて甘い)成長物語もあるし、まあ何しろ肝は海上バトルでしょう!
街を襲うエイリアン達の攻撃の圧倒的なパワーも確かに見どころではあるが、やはり海上で行われる戦艦(駆逐艦)による攻撃には胸がおどる。
鳥瞰による海上の船隊をとらえたショットや主砲の攻撃シーン。
クライマックスは何だかんだと盛り上がる。
浅野忠信もどうせ主役の咬ませ犬的役割だろうと思っていたら予想外に活躍していて、とはいえアレックスとの関係性は中途半端ではあったけれど、いやでも「俺に考えがある」と提案して行った作戦シーンは、ベタなりに頑張っていたと思う。


エイリアン達の攻撃は、確かにビルぶっ壊したり容赦ないように見える*1が、やみくもにジェノサイドを行っているわけではなくて出来る限り必要な攻撃にとどめているように描かれている。
捕虜を取り戻しに来たシーンも、船内に堂々と入ってくるが目的を果たせばそれ以上の殺傷は行わない。
非常に現実的なエイリアンたちであった。
終盤近く、義足の退役軍人がエイリアンとタイマンで闘っているが、その後ろでは他のエイリアン達がそれには目もくれずといった風情で、せっせと作業を行っていたりしている。
「いや、いま原住民と関わってる暇ないんですわ。この通信システムちゃんとやらないとあとでドヤされるし」
とでも思っているんじゃなかろうか。
まあヤマトじゃないけどガミラスにはガミラス大義がある、ってところでしょうか。


ヤマトと言えばじゃないが、やっぱりクライマックスのミズーリ号の攻撃がやはり良い。
「もう、俺達には船がない」
「いや、船ならあるじゃないか。あそこに」
「…!ばかな。ミズーリは今やただの骨とう品だぞ」(
以上かなり適当)
という会話は赤い土に埋まっている錆びついた戦艦大和宇宙戦艦ヤマトとして甦るあの場面を想像してしまい、アツくなれる。
スペース・カウボーイならぬマリーン・カウボーイ達の爺さんたちが集まる場面についても、「いやいや、ないでしょ」という気持ちよりは「わははは!頼みますぞ!」という気持ちの方が上回った。
そりゃね、砲弾どっから持ってきたんだとかツッコミたくなる部分はありますが、それでもラストの奇策のような攻撃には素直にカタルシスを感じた。*2

テイラー・キッチュは多分初めて観るし、実は今日の今日まで『ジョン・カーター』の主役と同じ人だと知らなかったくらい。どちらも予告編は何度も目にしていたんだけど。
とりあえず今作ではそれほど魅力を発揮していたかどうかは分からない。悪くないけど、「おお!これは凄い人が出てきたな!」と思えるほどのインパクトはなかった。
嘘か真かアレックスの役はジェレミーレナーにもオファーされていたとかで、それ聞いちゃうとジェレミー・レナーで観たかったな、と思ったことは否定できない。
アレクサンダー・スカルスガルドリーアム・ニーソンの安定感は流石って感じだけど、まあ型どおりといえば型どおりとも言える。
リアーナについては老人たちとの会話の時に可愛い顔をした意外はそれほど見せ場はない。ミシェル・ロドリゲスへの道は遠い。目指してないだろうけど。


エイリアンの造形はびっくりするほど斬新という訳ではない。それでもミリタリーな装備(ヘルメット、戦闘服などなど)はほどよい距離感を持ったデザインで良かったと思う。奇抜になり過ぎなてないし。
そして行動も現実的で、無駄な戦闘は行わない。冒頭付近で「奴らがコロンブスで、俺たちが原住民って事か」というセリフがあったけど、まあもしかしたら「無駄な殺生はやめなさい」と上官に言われてるのかもしれないな。
街のハイウェイを壊したりしているのも、害虫駆除程度の認識しかないのかもしれない。
黙々と業務をこなすエイリアン達という描写は少し新鮮だった。そうでもないか。


とにかく。
主砲から発せられる砲弾や機銃攻撃の放物線は、それがリアルであるかどうかは知らないが、ワクワクさせてくれるし、重厚な人間ドラマや精密なストーリー展開などを期待しなければ満足できる作品だと思います。

しかし良く考えるとフィクションとはいえ実在する船を沈めちゃって良いのだろうか。護衛艦みょうこう

*1:しかし、あの球体の攻撃凄まじいね。あれ最強、最凶じゃないですか。

*2:自分の観た回にはアメリカンキッズ(推定)たちが結構来ていて、この攻撃が成功した時には実際に拍手していた。楽しんでいたようで何より。