ドンファッルッカットミー。 『永遠の僕たち』
多分最初に観たのは『ランブルフィッシュ』だ。
コッポラの新作と言う事とマット・ディロン目当てで観に行ったら、ミッキー・ロークの色気とスチュワート・コープランドの音楽にノックアウトされた訳だけど、と同時に酔っ払いのヨレヨレのおっさんが実は凄い人だというのを後で知ったりするわけで。
「え?イージー・ライダーってあのおっさんが作ったのか!」
「地獄の黙示録にも?っていうかジェームズ・ディーンと共演しとるじゃないか!」
そして数年後に呼吸器つけながらサディスティックにイザベラ・ロッセリーニを殴る男として強烈に登場する男。
デニス・ホッパー。
まあ正直なところ通俗的な作りではある。
さすがに月曜ドラマランドとまでは言わないが、一歩間違えれば安い2時間ドラマになりかねない。それを救っているのは主役二人の輝きですかね。
ヘンリー・ホッパーとミア・ワシコウスカ。
通俗的な空気をこの二人がかろうじて観る価値のあるものに変えている。というのが正直なところ。
ミア・ワシコウスカの困ったような眉毛とスキニーな肢体から発せられる儚さのオーラは、ともすれば携帯小説的というか薄っぺらなキャラクターとなることをギリギリで避けられている。
ガス・ヴァン・サントにしては、とはいえそれほどフィルモグラフィーを網羅している訳ではないけど、彼の映画で女性が魅力的に見えたのは個人的には『ドラッグストア・カウボーイ』のケリー・リンチ以来だ。
まあ、しかしやはりヘンリー・ホッパーだね!
彼の姿を観るだけでもこの映画を観る価値がある。逆にいうとそれしかないとも言えるんだけど。
目元からあふれ出るホッパー遺伝子の力強さ。思春期をこじらせたような表情、時おり見せるはにかんだ笑顔、そして大人は判ってくれない的反抗…。いま、この時だからこそ観る事ができる青さ全開のキャラクター。
それを確認することができただけでも良かったと思っておく。
加瀬亮は、良くも悪くも加瀬亮だった。
英語は自然だし、悪くないんだけど、正直中途半端なキャラクターだったと思う。イーノックとの友情関係もちょっととってつけたような感じだし、イーノックが生死の狭間をさまよう事のシンボルとしてもイマイチ。
あとこれは作品そのものには直接関係ない話だけど、ヒロシが読む手紙の字幕はもう少し工夫があってもよかったんじゃなかろうか。
ヒロシが英語で話しているのは仕方がないにしても、字幕はせめて彼が書いた日本語の文章というのが感じられる表現でないと手紙のエモーションが伝わりにくと思う。*1
あと個人的に良かったのはアナベラの姉役の人。
上手く言えないけど、あの演技の感じは嫌いじゃない。名前は知らない。
と言う事で作品としては、それほど強く心を動かされる作りではなかったとは思うけど、好きなシーンもいくつかあって
ハロウィンでのアナベラの着物姿は可愛らしかったし*2、森のシーンでのやりとりは中々良い感じでグッとくる。イーノックとアナベラの姉エリザベスの会話のシーンも、イーノックのふざけた思春期加減と現実的だが妹思いのエリザベスとのバランスが悪くない。
そしてラスト。
この映画はラストで全てを許しても良いという気持ちになる。
イーノック/ヘンリー・ホッパーが見せたあの笑顔。
ニコのボーカル曲とヘンリー・ホッパーの笑顔。
それまでの薄っぺらい感じも青臭い若者の反抗も全て水に流してしまうほどの瞬間が得られる。
ヘンリー・ホッパー、彼のこれからの輝かしい(のか波乱に富んだなのか分からないけど)キャリアのスタート地点を確認しておくという意味では観ておいて損はない。のかもしれない。
そうでもないか。