Japan is ours, and it owes us a living. 5/3(祝)モリッシー来日公演@恵比寿ガーデンホールの雑感

思想や嗜好の違いというのは、他人との親和性において重要なのは、そりゃまあそうなんだけど、許される違いというかそれには許容範囲というのが当然ある。
例えば自分はカープファンだが、だからといって他球団ファンと相容れないという事はない。巨人ファンだろうが阪神ファンだろうがそれを理由に付き合い方を決める訳ではない。
「野村君、良いピッチャーやな。そろそろ1軍にあげたろか」とか言う人間がキライなだけだ。そういう人とは近付きたくない。

と言う事で
Morrissey Japan Tour 2012
追加公演 5/3 恵比寿ガーデンホール

に行ってきた。

モリッシーは95年の『サウスポーグラマー』を出した時に来日した時以来。正直それ以降に関してはアルバムが出れば手にはしていたけど、それほど聴きこんでいるという訳ではない。
今回についても来日する事を直前まで知らなかったくらいだ。ツイッターで知った。いやはやインターネットで素晴らしいですね。

雨の中恵比寿ガーデンホールへ向かう。
95年もガーデンホールで観たが、あの頃はまだ若く、しかも生モリッシーに対する欲求が強かったので割りと前の方にいて揉みくちゃになっていた。
しかし今ではそれほどの体力も気力もないので後方待機で開演を待つ。
客層はやはりモラトリアムをこじらせたような同年代の人も目立つが思ったより若い人が多いな、という感じ。スミスTシャツとモリッシーTシャツの比率は半々くらいだろうか。思ったよりグラジオラスの数は少なかった気もする。ていうかステージに投げた人いなかったんじゃないか。まあ、いいけど。
開演前のステージには幕がかかっているが、それがスクリーンの替わりとなって50〜70年代のミュージックビデオが流れている。
ニューヨークドールズが流れると場内からは拍手が起きたりして。
最後、名前は判らないがバニーガールの格好をした女性が何事が叫ぶと同時に幕が落ち、開演スタート。
この始まり方、カッコ良かった!

何故か上半身、というか短パン姿のバンドメンバー。女性のサポートギターだけは流石に服来ていたけどそれ以外の4人(ギター、ベース、ドラム。キーボード)は黄色のピチピチしたパンツのみ*1で演奏。上手く説明できないけど、何と言うかゴダールの映画を観ているような感覚。
1曲目の途中でモリッシーもTシャツを脱ぎ上半身裸に!「おお!御大も裸で行くんですか!!」と思ったら、すぐ引っ込んでシャツ着て出てきたけど。

95年の時は当時の新作「サウスポーグラマー」の曲が中心で、スミスの曲は「shoplifters of the world unite」くらい。
それと比較すると今回はスミスの曲が多い。
アンコールも含めると5曲。
2曲目からいきなり「How soon is now?」ですからね。たまらんですよ。
別にスミスの曲をやってくれたという意味ではないけど、何と言うかモリッシーさん優しい。
小林旭ばりに最前列の人に握手しながら歌ったり、「また日本に来るよー」的な事を行ったり、日の丸掲げたり。
とは言え「meat is murder」ではステージ後方に牛さんやヒツジさんや鳥さんが可哀想な事になっている様子を映したビデオをガッツンガッツン流したりして*2なかなかのインパクト。


個人的ハイライトは「last night i dreamt that somebody loved me」だろうか。どうしてもスミスの曲になるとググっと盛り上がってしまう。
円熟味とでも言いたくなるようなモリッシーの朗々とした唄が琴線に触れまくり。
そして「please, please, please let me get what i want」
イントロから涙が出そうになる。
今度だけ、だた一度だけでいいから願いをかなえてくれ
という切実な叫び。涙が・・・
と思ったら途中でモリッシーが噴き出してしまい微妙な空気に。
しかし、まあこういうのもliveの醍醐味と言う訳で、その後の「no!no!no!」という叫びも含めて、これもまた良い瞬間だった。


なんとなく優しい感じのモリッシーだったけど、そこはやはりシニカルなところも見せていて。
「every song is……disgusting」とか、あれは何の曲だったか歌い終わった後に「…not bad」っていったり。
「この後はコリアに行くよー」って言った時の微妙な空気は、もしかして狙いなのか何なのか。

そういった優しさとシニカルさとブラックなジョークの最たるものがラストの「everyday is like sunday」だろうか。
日の丸を腰に巻き、やがては振り回しながら

「カム!アルマゲドン!」

ですからね。いや、ほんとこれにはやられました。それを聞きながら「うっひょーーー!」とか言ってる観客。
そういった諸々を含めて、素晴らしすぎる。
1時間ちょっとの公演時間は決して長いとは言えないかもしれないが、とてもとても濃密だった。

そして帰りにトートバッグを買って帰る。
ショップリフタートートバッグ。わははは。いやそういった用途には使いません!

*1:終わった後、ギリシャ人とイギリス人の人達とちょっと話した時に「モリッシーさん、ゲイですかー?」って聞かれた。まあ、それはともかくバンドがそんな格好でも全く違和感を抱かなかったという点がモリッシーモリッシーたる所以か。

*2:終演後、ロビーに出てみると動物愛護団体だかなんだかが募金をしていた。「かわいそうな動物たちに!」って。いやちょっとそれはどうかなって感じだけどね。ちなみに子連れで来ていた人がいたんだけど、終演後その子は「ねえー。今日焼肉食べるーーー?」って言ってたけどね。