特盛3時間。よし、とりあえず踊ろうか!『ロボット』

80年代や90年代あたりだとドラマや映画の突っ込みどころを笑うというのが基本的なスタンスだったりしたものだ。
しかし『ムトゥ 踊るマハラジャ』には、そういった突っ込みどころを「一周まわって面白い」とか言いながら上から目線的に楽しむ、というスノッブで嫌らしい見方を越えるパワーがあった。
インド映画、なんかスゲーな!と素直に感じるパワー。
と、言いながらその後、全くといっていいほどインド映画観てないけどね。

という事で
『ロボット』

せっかくなので完全版を観て来た。結論から言うと歌や踊りのパーツをカットした(と思われる)通常公開版よりも完全版の方が断然オススメ。長いけどね。
もう日本も「いやインドもなかなか頑張ってますね」なんて言える立場でもなく、今作でも何と言うかIT立国としてのインドの側面を見せつけられたような気すらする。

ストーリー的には70分くらいで終わる所を過剰な演出と歌と踊りで3時間の特盛に。それが冗長に感じるスレスレの所でバランス取れているというところでしょうか。
正直なところ、期待のハードルを上げすぎた感もあって多少物足りなさがない訳ではない。
しかし、やっぱダンスシーンが良いよね。サナちゃん(アイシュワリヤー・ラーリ)の踊りを観るだけでも価値がある。と言いたい。ラッパーガールのところなんてビヨンセかと思うほどのコンテンポラリーなダンスポップを見せてくれます。

何故かビーチやマチュピチュで踊ってたりする意味不明さは、最早意味不明どころか、だからこそ素晴らしいと言いたいくらい。ダンスシーンだけ集めたクリップが欲しい。

ラジニカーントも流石と言うか、もうスーパースターという名にふさわしいワンマンな活躍でした。
ズラを被っているというだけでなく、非常に若々しい。

アクションシーンでのCGは決して質が高い訳ではなく、そして「このチープさが良いのよ」という話でもない。
ぶっちゃけショボい。それが多少瑕疵と言えなくもないが、そらはおそらくこの作品が「インド発の変わった珍品」ではなくて、きちんと王道のエンターテイメントを目指している証拠であるとも言える。
んじゃないかな。
チッティがダークサイドに堕ちる過程はダースベイダーを思い起こさせる。
ボラ博士が捨てられたチッティを持ち帰り、再生させてマスクを被せるシーンはエピソード3のラストシーンへのオマージュっぽい。いや、知らんけど。
ダンスシーンのロボもストームトゥルーパーぽかったし、ずばりライトセーバーによるアクションもあったしね。

ストーリー自体は単純だが、それでもラストのチッティが自分の運命を受け入れる場面なんかは図らずもジーンと来たりなんかして。
もちろん細かい心理のヒダみたいなものを精密に描いている作品ではないんだけど、3時間の長さがそのままキャラクターへの愛着度合いに繋がると言うかね。
「なんか色々あったなあ…」という感慨に近いものがあったのかもしれない。

とにかく。
「楽しい踊りと歌が観たいだろ!」という精神が感じられて、実際それが楽しい。
こういうものばっかりだとそれはそれで困るけどね。