センチメントな錯覚も悪くない。 『プロメテウス(3D)』

ハンニバル』を観た後に無性に肉が喰いたくなって、帰りに肉汁たっぷりのハンバーグをがっついた事を思い出したりして。

と言う事で
『プロメテウス』

リドリー・スコットが『エイリアン』の前日譚を撮る、というニュースはやはりそれなりに盛り上がるもの*1であって、予告編でかなり期待度が上がっていたのは事実。
それだけに「もりかしたらマズイ事になってるんじゃないか」という危惧も同時にあって。

序盤は寝不足もあって眠気を誘っていたが、洞窟以降は引き込まれる。部分部分「おや?」と感じる部分もないではないが、M・ファスベンダー演じるデヴィッドの存在感で引き込まれる。ファスベンダー良かったねえ。
その分、ショー(ノオミ・ラパス)やその他のキャラクターに感情移入する隙間がなかった感じもある。
時おりエイリアンのパロディ*2のようでもありキューブリックのオマージュのような描写もありつつ、宇宙船の造形や洞窟内部のデザインなど魅せてくれる。*3
衛生の荒野をバギーとかトラックで移動しているところを遠景で捉えているショットや終盤のスペクタル部分など映像的にも好きな箇所も多い。

ただ、もうひとつグっとくるポイントが欲しかったと言う感じだろうか。


基盤となっている神話や宗教(キリスト教)に由来している部分とういのは、どうしても知識が不足しているので理解が浅くなってしまう。人類の起源、進化論、十字架のくだり、あるいは堕胎といったモチーフについてはボンヤリとしたイメージとうレベルでの受け取り方しかできていない。
そういった部分の理解が深ければまた違う受け止め方があったのかもしれない。

以下ネタバレも含むかもしれません。

ショーが受胎できない身体であることや、アンドロイドであるデヴィッドがエイリアン創造の一躍を担っている意味、この辺は色々と詳しい解説を見てみたいところ。*4

それはともかくとしても、全体的にキャラクターへの感情移入度が低かったというか。
だからフィフィールドやミルバーンが最初の犠牲者となっても「フラグだなー」くらいの感情しか出てこない。ショーのパートナーのホロウェイにしてもそうで、彼の最期はとてもエモーショナルで悲劇的ではあるが*5それほど琴線に触れない。


シャーリーズ・セロンも綺麗カッコ良かったけど、ただもう少し活躍して欲しかったね。冒頭の腕立て伏せ観た時は、ダークヒロイン的活躍があると思っていたんだけど。


ノオミ・ラパスは頑張っていたと思う。決して整った美人と言う訳ではないのに時おり魅力的に見えるのが不思議。でもキャラクターとしては弱かったのかな。騙し打ちして拘束を振り切る場面は良かったけど。


その点、ファスベンダーは素晴らしかった。
序盤の皆が睡眠状態の時に、艦内でひとり過ごす姿。まるでHAL9000を擬人化したようなキャラクターが全般に渡って印象深い。
彼の行動規範はもちろんウェイランドにプログラムされているものではあろうが、洞窟でスペースジョッキーの秘密を探しだした場面で見せる表情が素晴らしい。
そこにはプログラムされた行動を超えたものがあったのではないだろうか。
スペースジョッキーに頭引き千切られながら、その顛末をしっかりと観ようとしている表情もよかった。
ラストにショーを助けようとしたのは、任務の一環にすぎないのかもしれない。というか、おそらくそうなんだろう。
しかし頭をカバンに詰められながら魅せる笑顔の素晴らしさを見れば、センチメントな錯覚をするのも悪くはない。


と言う事で映画を観た帰り道、お腹が空いたので寿司屋に行ってイカゲソを喰いまくったのでした。

*1:とはいえ『エイリアン』シリーズは1stしか観ていない。エイリアンが複数形になったり、ガントレットみたいなロボットに乗って闘うってのには何か違和感を抱いていた。あ。AVPは観たな。あれは楽しかった。

*2:ちゃんとヒロインがパンイチ状態になるとか

*3:ギーガーの幻影がちらつくように見えるのは致し方ないところか。どれだけギーガーが関わっているか知らないけど。

*4:昏睡したショーの首元から十字架を外すデヴィッドとその後のショーの「堕ろすのよ!」という叫び、とかね。

*5:容赦なく火炎放射器を放つヴィッカーズ(シャーリーズ・セロン)は見事だった。