紙幣が映ってるだけなのに妙に美しいのは何故か。 『カリフォルニア・ドールズ』

人間の記憶ってのは曖昧ですね。
なんて別に改めて言う事でもないけれど。

昔読んだ本、観た映画に関する記憶は「面白かった」とか「とてつもなく心動かされた!」といった印象を持っていたとしても、1回しか読んでなかったり観てなかったりするもので、改めて再確認してみると全く記憶違いをしていると言う事がある。

という事で
カリフォルニア・ドールズ

以前、昔は映画は二本立てだったよね、と言った風な記事を書いたことがある。
ポロリもある…らしいよ。忘却の彼方の『カリフォルニア・ドールズ』 - 残像つれづれダイアリー

このカリフォルニア・ドールズはその時に観たっきりで(テレビ放映くらいは1回くらいあっただろうか?)、何しろ日本ではDVDにもブルーレイにもなっていないという代物で機会があれば観たいと思っていた作品。

輸入盤ブルーレイでも買うかな、と思っていた矢先何とシアターNリバイバル上映をするというではないか。
というわけで喜び勇んで渋谷へ飛んで観にいったのがかれこれ一ヶ月も前のこと。
残念ながらシアターNも12/2で閉館してしまった。

昔はロッキー3の同時上映という認識しかなくてアルドリッチなんて知らんもんね、というスタンスで鑑賞したこの作品は、見直してみればやはりよく出来た作品で。

もちろんロードムービーであり、スポーツエンターテイメントであり、青春映画でもあり、そして何しろ人生一度は輝いてみせようじゃないか!的な意気を感じさせてくれる映画。
改めて見てもロッキー3の同時上映としてこれほと適した作品はないとも言える。

寂しい工場地帯をバックに移動するドールズとマネージャーの三人旅は、ほどよい距離感と親密さのバランスが取れたものになっていて、途中色恋沙汰的エピソードもあるんだけど、そこを無駄なく描写されていて心地いい。
ちなみにアルドリッチ作品は『ロンゲスト・ヤード』くらいしか観ていなくて、(あとテレ東の昼間に『北国の帝王』を観たかな)とても彼について語る材料は無いに等しい。
だからアルドリッチの映画史的な観点からこの作品がどういう意味を持っているのかは判らないけど、男くさい映画を撮ってきた(んだよね?)彼の遺作がこうした女性を中心としたものになったというのは何というかこれも運命なのでしょうか。

印象に残っている台詞がある。
ピーター・フォーク演じるマネージャーが時折口にする
「those frills cost money」
字幕では
「ちゃんとしたものはお金がかかる」とでも訳されていただろうか。
何というかマネージャーの狡猾さを表していると同時に、
「金は使うべきところに使えば良い」といった処世術も含んでいるようで妙に耳に引っかかった。
泊まる所は安宿、食事もクソ不味そうなハンバーガーだったりするわけだけど、ここぞと言う時には金をばら撒いて(いや文字通り)、華やかなドールズを演出する。
山師っぽさと同時にユーモラスな愛嬌を感じさせるのはピーター・フォークのなせる技かもしれない。

そして何しろドールズたち。
プロレスシーンはほとんど吹き替えがないように見える。いや全くないという事はないんだろうけど、それでも彼女たちは身体を張っている。

残念ながらこの作品以外では彼女たちの姿は余り観る事はないようだけど、それでも十分輝きを放っている。それだけでも素晴らしい事です。
アイリスとモリー、熱演だし予想外にモリーが可愛く見えたは大人になって趣味が変わったのでしょうか。

ちなみに20年以上前に観て残っていた記憶はミミ萩原が出てたこととおっぱいポロリがあったこと。これは記憶通りだったけど、もうひとつピーターフォークが夜中に煙草の自販機をバットで叩いて中身をかっぱらうシーンがあったという記憶はちょっと違っていた。
行動はそのまんまだったけど夜じゃなくて昼間だった。おそらくもうひとつのバットを使うシーンと混同していたのだろう。
どうでもいいことですが。
しかしこのシーンをとってみても、何というか映画のルックが贅沢ではある。
なんて非常に抽象的な事を言っているけど、ちょっとした廊下のシーンとか青空をバックにした標識とか、そういったものが「ただ撮っただけ」というのではないとても力のある画面に感じる。影とかね。上手くいえないけど、ちゃんとしてる。
かといって奇をてらった画面にはなってなくて、ごく普通のシーンにしっかりと職人的な空気を感じるのは、気のせいだろうか。

ラストの一戦は入場シーンから何度でも繰り返してみたい。
派手なギミックと仕掛け(色々な)は、しかし見かけ倒しではなくドールズ(とその対戦相手)の男気が感じられるというかね。
阿部四郎級の活躍をみせるレフェリーの効果もあってとても盛り上がる展開。

という事で仮に日本でリメイクするなら、ももクロちゃんの若大将、しおりんこと玉井詩織ちゃんを使っていただきたい。
彼女の長い手足を使ったスペースローリングエルボーがスクリーンで炸裂するのを観たいのです。

いやしかし日本でソフト化してくんないすかね。輸入盤買うしかないのか。