歪みを受け入れろ。そして俺を癒せ。『コズモポリス』

我らがリーダー夏菜子ちゃんは、好きな映画に「トワイライト」シリーズを挙げたりして、まあ何と言うか微笑ましいやら苦笑するやらというところだったりする。
そしてもちろん自分は観てはいない。

という事で
コズモポリス

何と言えばいいのか、正直わからない。
終始不思議な映画だった。
とはいえ頭の上に?マークを浮かべて心もとない気持ちで劇場を出たかと言うと、それは全くの逆で。
奇妙な感動を覚え、エンドクレジットで流れていた曲を頭の中で反芻しながら新宿の街をフラフラとしていた。
ヒストリー・オブ・バイオレンス」程のファーストショットから「これはとんでもない傑作だぞ」という衝撃を感じさせる凄みはなかったかもしれないが、それでも冒頭から「ああ…この世界はちょっとおかしいぞ」と感じさせるのは流石と良いたい。
なぜかもう一度観たくなっている。そんな中毒性があるような気がする。

リムジンのゆっくりとした動き。そして外界と隔絶したような静寂。
それが主人公の内面描写などと言うつもりはないが、しかしそういった表現が体に染みてくる感覚は、あれは何なのだろうか。
セックスもバイオレンスも、生々しさと同時に無機質で薄い膜がはったようなぎこちなさが両立している。

リムジンに訪れるキャラクター達は、一度出れば退場し二度と姿を表さない。
その儚さは、まるで幽霊のようで、そもそも実在している人間たちなのだろうか?とすら思ってしまう。
まるでエリック・パッカーのセラピストのようでもあるし、また逆に彼の患者のようにも見える。

そして最後のセラピスト/患者であるベノ・レヴィン*1の目の前では自分の宇宙ではなくて相手の宇宙に生身で飛び込んで行く。
合い言葉のナンシー・バビッチを唱えて…。*2


それにしても。
ロバート・パティンソン。正直舐めてました。少女漫画的映画のチャラい優男ってイメージを勝手に抱いてた自分を恥じたい。
浮世離れした瞳と佇まいは、ちょっとしたものですわ。
お尻に指突っ込まれて*3顔を歪めたりもして。
2時間文字通り出ずっぱりだったけど、十分堪えている。
次回作ではヴィゴと共演するとかしないとかという情報をどこかで目にしたような気がするけど、それホント楽しみですわ。

ポール・ジアマッティはもちろん、ジュリエット・ビノシュジェイ・バルチェルケヴィン・デュランドなどなどキャストは皆良かったんだけど、何しろ一番驚いたのはサマンサ・モートンがあんなに巨大化していた事。
あと床屋でのおっさんと運転手の噛み合ない会話もおかしいやら不気味やらで好きな場面のひとつ。

という事で。
クローネンバーグのベストとは言わないが、それでもこちらの何かを突いてくる作品。
原作でも読むか。

*1:本名リチャード・シーツだっけ?「ベノって呼べっ…!」

*2:このシーン、良かった。狂気の扉を開けたって感じで。

*3:あれ、ホントに指入ってるんじゃないかという気すらしている。