ニトログリセリンと聞いただけで震えていたあの頃。『藁の楯』

クリストファー・ノーランのヌメヌメとしたカーチェイスシーンは結構好みだったりする。ヌメヌメしたってのがどういう状態なのかは説明できないけど。

と言う事で
藁の楯

設定や細かい辻褄の瑕疵については、思いのほか気にならない。浮いてしまうんじゃないかと危惧していた松嶋奈々子にしても、そっくりな顔した息子の存在で許してあげたい。
セブン的展開を想起させつつ、結果として比較的オーソドックスな着地をした事や、ところどころ画面のルックが何となくテレビの2時間ドラマ的になるところも許容範囲だ。
ダークナイトかよ」という爆破シーンは、しかし白けさせるような作りではなく、というか何だかんだと素直にカッコイイシーンになっていた。

我々が易々と抱く「三池ワールド」に対するイメージはそれほど散りばめられてはいない。例えばホームでの包丁男の場面では、それこそ誰かの脳漿あたりが飛び散るんじゃないかと身構えていたが、そんなこともなく。
それでも執拗に幼女のパンツを写し続けていたり、タンクローリーに「ニトログリセリン」とデカデカと表示してあったり、あるいはラジオのニュースで読まれる清丸宛の手紙を読むアナウンサーの居心地の悪い声のトーンにソレを感じてみたり。

しかし何よりも藤原竜也に尽きる。
同情や感傷の付け入る隙を与えない清丸のクズっぷりには、感心するほかない。
ホームで人質に囚われた少女への一言やラストの台詞まで、一貫してクズ。
こういう役をやらせたら流石ですわな。
「清丸なんて殺されていいんだよ」と思わなければこの作品は成り立ちようがなく、その説得力を補強するには充分であったのではないでしょうか。


それにしても三池監督の多作ぶりには驚くね。