私たち、今会える××…『ワールド・ウォーZ』(3D)!!

パンデミック系やパニック系の映画を観ていると、その崩壊の過程で社会のシステムはどうなってるんだろうな、今どのレベルまで維持できているのかな、という事がチラチラと頭に浮かぶ。
スーパーや町並みが荒廃していくのはともかくとして、水道・電気・ガスといったインフラの部分がどこまで維持できているのだろうか、とか。水道局の人、こんな状況でも働いているのかな、とか。
特に最近は、「発電所、大丈夫だろうか」と考えたりもして。

という事で
ワールド・ウォーZ


12秒ですよ。ゾンビになるまで。早い、何しろ早い。おまけにゾンビの動きも速い。
この設定は伝播の早さにつながる。その伝播の早さ故に、都市部においては圧倒的なスピードで崩壊を訪れる。
我々にはもうなす術が見つからない。

自分だったらあっという間にZ化していると思うが、もちろん主人公のジェリーは「もうゾンビになった方が良いかも」という事は考えない。序盤から高い適応力と判断力を見せて、先ずはファーストステージを乗り切っていく。
元国連職員というのがどれだけの特殊能力を持っているのか判らないが、ジェリーにはただ逃げまどうだけでは許されない。ついでに言うなら身寄りのない少年まで(一宿一飯の恩義と助太刀があったにせよ)引取らなければならない。

セカンドステージ。ジェリーに安穏な日々はこない。船に乗ってさてどうしようか、なんて考えてる暇はない。
彼には世界を救う(手がかりを探す)という仕事が課せられる。かなりハードルは高い。原因も判らないし、もちろん対処法など見つかる目処など全くない。専門知識(何の知識が必要なのかという事も含めて)も持っていない。

何故、彼にそういったとてつもない課題が与えられるのか。そのことについてはそれほど合理的な理由は明かされない。大統領もいない混沌としたこの世界で、彼こそが救世主に選ばれた理由は…もうブラピだから、としか言いようがない。
それでも彼は世界を救う旅に出る。韓国、イスラエル、イギリスと行く先々で(段々と加速していく)酷い目に合いながら、それでも彼は世界を救う為に働く。

そしてサードステージ。いよいよ世界を救うヒントをジェリーは掴もうとするわけだけど、このラストステージのクライマックスはかなり異色ではある。
ジェリーはクライマックスでは何もしていない。
ただ歩いているだけ。特殊な戦闘能力も持たない状態で、というよりもむしろ弱者になることで危機をすり抜ける。
一見何もしていない彼の仕事は、だからこそ壊れた自販機から取り出した清涼飲料水が報酬として見合っているのかもしれない。
考えてみればこの作品にはそれこそ大量のゾンビがわんさか出てくるが、ジェリー自身が仕留めたゾンビは数えるほどだ。*1

いやもちろんソコへ至る過程で、ジェリーが取った行動は賞賛に値するしヒーロー的な振舞いであることは間違いはないんだけどね。

それにしても。
映画の中で描かれるゾンビや厄災というのは、何かのメタファーとして解釈したくもなるものだが、残念ながら自分にはそれを語る知識がない。
ただイスラエルの壁を乗り越えようとする群衆には、言いようのない迫力というか絶望というか、そんな感情を抱いた。
水に一滴インクが落ちるだけで…って感じで安全な場所が危険な場所へと変わっていく様。地獄のような絵図、なまじ壁があるだけに始末が悪い。ヘリコプターが落ちて(堕ちていく)ところなんて、「嗚呼…」と思わず声が出そうにはなった。

ラストはまるで「打ち切り漫画のようだ」という印象は多くの人が抱くところだろうと思う。事実、自分もそう思った。
確かに急いでまとめた感があるのは否めないが、その原因はブラピの台詞にあるのは間違いない。
あれがなければ、もう少し違う印象を持ったかもしれない。

しかし聞くところによるとこの作品は三部作という話ではないか。
進化したZ軍団と戦ったり、思わぬラスボスが登場したりするのだろうか。何しろ俺たちの戦いはまだこれからなんだしね。

歯抜けのデビッド・モースが活躍するようならば、観にいく事もやぶさかではない。

*1:というかもしかしたら留めを刺したのは一体もいないのではないか。誰かしらがダイハードのラスト的な助太刀をしてくれていたような気がする。