デジタルCGによるフィルム撮影の再現。『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』

しかし、ついにスコセッシまで3Dに手を出すような時代になったんだね。
まあ新しい技術をノスタルジーだけで否定するつもりはないけど、スコセッシには3D似合わない気がするんだよね。なんとなく。
スターウォーズを3D化するのとタクシードライバーを3D化するのは話が違うと思う。
と思う一方で。
キューブリックが今の時代に生きていれば3D技術使って、とんでもないモノ作ってくれるのかもしれない。
といった妄想もあったりするわけだけど。

と言う事で
タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密

全編にスピルバーグらしい空気は漂っていて、それは確かにCGだろうが3Dだろうが変わらないものではあった。
特にCGの「本物らしい」表現力は流石と言うほかなく、水の質感など目を見張る出来だと思う。
後半のアクションシーンもまさにコミカルな展開の連続で、そのクオリティは決して低くない。ていうか高い。
はずなんだけど。
イマイチ乗り切れなかったのは何故なんだろうか。
犬のスノーウィーにも愛嬌を感じるし、敵役のサッカリン始めキャラクターにも魅力がないわけではない。
ただしそのキャラクターの魅力はやや空回りしていたような感じがする。
例えばコメディーリリーフ的に登場していた双子のような警官。普通ならストーリーに良いアクセントを与えてくれそうな役割なんだろうけど、今ひとつフックが足りない感じがしてしまう。
せっかくサイモン・ペッグニック・フロストを使ったのに勿体なかった。


アクションシーンもインディ・ジョーンズを思わせる「んなアホな」的バカバカしさで楽しい事は楽しいんだけど、もうひとつ気持ちが盛り上がってこない。
ハドック船長(どうでもいいけど字幕がハドックだったりアドックだったりしていた気がするけど、あれ紛らわしい。フランス語発音にするならするで統一して欲しい)の敗者からの一発逆転にもカタルシスをそれほど感じる事がなかった。


観る側の問題だろうか。うーん。


ただ、繰り返しになるけどCGのクオリティは高い。その部分だけでも観る価値があるとも言える。
特にフレアというかスミヤというのか本来CG表現には必要のないカメラレンズでの現象を再現している点には、スピルバーグの偏ったこだわりを感じて、そこは面白い。
確かに太陽のハレーションみたいなものが漫画やアニメで表現される事は少なくはない。その意味ではそれほど特殊な手法ではないかもしれない。
しかしスピルバーグの場合は、そういった映像効果として使用しているというよりは、レンズで撮ったら現れてしまった現象=シミとして光のブレを再現しているような気がした。
つまりスピルバーグがCGで再現しているのはリアルな人物とか風景ではなくて、「レンズ/フィルムで撮影された人物や風景、その状態」を再現しているんじゃなかろうか、何て事を思ったりしたわけです。


やはりスピルバーグは一筋縄ではいかない。