気品すら感じる3Dの正しい使い方。  『ピラニア3D』

初めて観た3D映画は『ジョーズ3D』だと思う。
青と赤のセロファンを貼っただけのメガネをかけるヤツ。もちろんアバターみたいな奥行き感はなく、どちらかと言うと飛び出す絵本のような3D初体験だった。
銛が画面のこちら側に飛び出てきたのは覚えてるけど、あとは何と言うか…。

という事で
『ピラニア3D』


濡れたTシャツコンテストでのイーライ・ロスの雄姿。


まずは主役のジェイク君を見ていただきたい。

どうだ、この80年代顔は!まさにこの作品にピッタリの面構え。
彼はスティーブ・マックイーンの孫らしいんだか、まさか父親はチャドなのか?『ベストキッド』に出てたあのチャド。となると母親役がエリザベス・シューであるのも色々感慨深いものがある。
そんな事を思わず考えてしまうような、懐かしいというか中学生の気分で楽しめる映画だった。


一見、ふざけた映画のように思えて、何気に律儀に作ってあると思う。
冒頭の事件の発端(リチャード・ドレイファス!)から終盤まで、死ぬべき人間が死んで生き残るべき人間が生き残るという非常にオーソドックスな構成。
ラニアの謎に関するトンデモな学説(らしきもの)もまたそれらしくて良い。普通なら海洋学の教授とかになる役どころが熱帯魚屋の親父になってるのがまたね、アホかと。(褒めてます)
しちゃいけない行動をとってピンチに陥ったり、楽観的な若者がメッタメタにやられたりと、非常に「正しい」展開。90分以内に収まっているのも非常に嬉しい。基本、映画は100分以内で作るべきだ。


ローコストな感のある3D効果が丁度良い。目的がはっきりとした「正しい」3Dの使い方には気品すら感じる。東京タワーが飛び出したからって何だっていうのさ。
ここぞという場面(ピラニア、飛び散る肉片、プロペラ、そして××××)で活かされている。オッパイは思いのほか飛び出てこなかったけど。
そして一般的には3Dの欠点とされる画面が小さくこじんまりした感じになってしまう事が、この映画では効果的に作用していたんじゃないか。
特に終盤の浜辺でのジェノサイドシーン。箱庭みたいな空間で繰り広げられるミニチュアのような群衆の阿鼻叫喚。いや、不思議な感覚に囚われる良いシーンだった。

3D効果を抜きにしても、この浜辺のシーンは凄かった。途中から人間の方が凶暴になってピラニア化するし。ピラニアより人間の方が酷い事してる気がする。
それにしても海が血で染まるだけで何であんなに嫌な気分になるのか。ただ血が流れるだけより「ヤな感じ」がする。


ラストがまたね、素晴らしいんですよ。
ラニアの仕留め方もジョーズリスペクトだし、何より〆方が良い。予想の範囲内(というか「まさか、これで終わりじゃないだろ?あるんだろ?例のパターンが!」って思って観てた)なんだけどそれがまた期待を裏切らない。水曜ロードショーを観てるみたいで楽しい気分になった。


あと直接本編とは関係ないけど上映後の「お知らせ」には声出して笑った。そう来ましたか!


しっかしイーライ・ロス、楽しそうだったな。